Digit!

日常で起こる様々な現象に、ツッコんだりボケたりするブログ。

新作落語『ゴルフ指南』

枕は書いて無いですが、ゴルフの話を作ってみました。今までよりもボケの数を増やしまくっています。


『ゴルフ指南』

部長「小池くん、明日ゴルフなんてどうかい?」
小池「大木部長、誘ってくれるのは嬉しいのですが、あっし生まれてこのかたゴルフというものをやったことないんですよ。野球か競馬くれぇしか興味がなくて…」
部長「色んな趣味をもつのもいいだろう。どうだ、僕がゴルフを教えてあげるから、始めてみないかい。」
小池「えぇ!それは願ったり叶ったりです。よろしくお願いします。」
部長「まずは打ちっ放しがいいかねぇ。」
小池「その何とかっぱなしってやつ、あっし得意ですよ。」
部長「お、小池くんやったことあるのかい。」
小池「へぇ、洗面台の水は出しっぱなし、服は脱いだら脱ぎっぱなし、風邪ひいたときなんて鼻水垂れ流しっぱなしです。」
部長「汚いねぇ。打ちっ放しもいいけど、コースを回ってみようか。君ならこまごまと練習するよりかは、実際に言ってみてコツを掴んだほうがいいだろう。」
小池「あっし道具とか持ってないんですが、大丈夫ですか?テントとか、海パンとか、バーベキューセットとか用意しなくていいでしょうか?」
部長「何だい、キャンプにでも行くつもりかい。いやいや、道具の用意は僕がしておくよ。小池くんは身一つでやってくればいいから。」
小池「よっ!部長太っ腹、土手っ腹、ビールっ腹!」
部長「それ全然褒めてないから。じゃあ、明日ゴルフ場にやって来てくれ。」


翌日、千葉県の外れにあるゴルフ場にやってきた二人。
部長「おっ、小池くん。こっち、こっち!」
小池「部長おはようございます。ゴルフってこんな朝早くからやるんですね。」
部長「そうだね。朝9時くらいから始めて、終わるのは午後4時とかそれくらいかな。」
小池「えぇ!そんなにやるんですか?それは困ったなぁ。」
部長「困ったって何か用事があるのかい?」
小池「へぇ、今日は東京競馬場で大事なレースがあるんです。」
部長「何だい競馬かい。今日くらいは競馬のことは忘れなさい。」
小池「そんなぁ目をつけていた馬がいたのに!じゃあ部長。その馬が勝ったら立て替えてくださいね。」
部長「おいおい、何で私が払わなきゃいけないんだよ。まぁ、早速はじめようじゃないか。手続きは済ませておいたから。こちらが今日ついてくれるキャディーさんね。」
小池「部長もスミに置けないなぁ。これですか?(小指を立てる仕草)奥さんが来ないからって、愛人を連れてくることないでしょ。」
部長「バカだね。愛人な訳あるかい。この人はキャディさんといって、われわれに付いてサポートしてくれる人なんだよ。」
小池「ま、ま、マイネームイズ小池。ハーワーユー?」
部長「何で英語なんだい」
小池「だってキャディさんって名前なんでしょ?」
部長「違うよ!ただの職業の名前だよ。顔だってどうみても日本人じゃないか。」
小池「ああ、ほんとだ。ふつつかものですがよろしくお願いします。」
部長「そんな挨拶があるかい。それじゃあ、そろそろ始めようか。」

小池「では、あっしが用意しますね。」
部長「用意?ちょっと、小池くん。正気かい?レジャーシートを広げるんじゃないよ!」
小池「逆に聞きますけど、こんなに緑が豊かで、空気もうまい。絶好の宴会日和とは思いませんか?部長の好きな日本酒も用意してありますよ。」
部長「小池くん、恥ずかしいから本気でやめてくれ。キャディさんが苦笑しているじゃないか。早く片付けて!」
小池「えぇ、もったいないなぁ。じゃあ何するんです?」
部長「ゴルフだよ!いいかい、遠くに旗が見えるだろ。あそこに向かってボールを打つんだ。まずは、ドライバーからかな。」
小池「日曜大工でも始めるんですか?」
部長「別にネジ締めるんじゃないよ。ドライバーというのはボールを打つ竿の一つで、ウッドの中で一番大きいもののことをいうんだ。」
小池「ははぁ、なるほど。それがことわざの語源だったんですね。」
部長「どういうことだい。」
小池「だから「ウドの大木」でしょ?」
部長「ウドじゃなくてウッド!じゃあ、そのクラブを持って、構えてみようか。」

小池「(クラブを持って野球のバッターの構え)準備OKです!さぁ、部長。ボールを投げてください!」
部長「いかん、頭が痛くなってきた。思っていたよりもひどいぞ。小池くん!それは野球の構え!クラブの先端に、膨らんでいるところがあるだろ?そこに置いているボールを当てて打つんだ。」
小池「あぁー!このタヌキの金玉袋みたいなところっすね。」
部長「タヌキの金玉袋って…。まぁいい。その金玉袋に当ててくれ。」
小池「あっ、やっぱやめときましょ。想像しただけで痛くなってきた。この部分に当てればいいんですね。うりゃー!お、結構飛びましたね。」
部長「ああ、飛んだな。…クラブがね。野球じゃないんだから、打ったあとに放り投げるんじゃないよ。はい、拾ってきてもう一回。」

小池「へへ、すみませんね。よっとせの、うりゃー!ありゃー、変な方向に行っちまった。」
キャディ「ファー!」
小池「うわっ!キャディさんが叫びはじめたよ。こりゃ俺も負けてられねぇや。ソー!」
部長「何やってんだい。」
小池「ファの次はソでしょ?」
部長「音楽のテストやってるんじゃないんだから。あれはね、ボールが危険な方向に飛んだから「危ないですよー」の意味をこめて叫んでいるんだ。」
小池「それだったら、うちの団地の中はファーファー言いっぱなしですよ。」
部長「どういうことだい?」
小池「どこの家も、家計が常に危ないんですよ。」
部長「変なこと言ってるね。さて、ボールがどこに落ちたか見に行こうか。ありゃ、ラフに入ってしまったね。」
小池「えっ。どこに裸の女がいるんですか?どこどこ?」
部長「そんなわけあるまい。キャディさん、ここからあと何ヤードくらい?350ヤード?ふむ。じゃあ8番アイアンがいいかね。」
小池「では、あっしは3番ショートで。」
部長「野球のことは忘れなさい。」

それから何だかんだで、ピンのそばまでやってきた。
小池「部長!旗の近くまで来ましたが、ここからどうすれば?」
部長「穴があるから、そこに入れればいい。」
小池「え!穴にボールを…。あっし、座薬は入れたことがありますが、こんなボールは初めてで。」
部長「君とんでもないこと想像してるね。旗の下に穴があるだろ?あそこに入れるんだ。」
小池「あ、あれですか!そうだよなぁ、部長に変な趣味があると思ったよ。ちなみに、勝負はどう決まるんですか?」
部長「ああ、言ってなかったね。なるべく少ない打数で入れたほうが勝利だ。ちなみにホールごとに目安の打数が決まっていて、その回数で入れたらパーになる。」
小池「あっし、やっぱりゴルフやめますわ。」
部長「え、どうして急に。」
小池「だって頭がパーになるんでしょ?これ以上バカになったら、あっしはおしまいですよ。」
部長「いやいや、そういう意味じゃないから。あと、パーよりも少なくなるとバーディー、イーグル、アルバトロスとなる。」
小池「なんすか、その最後のティラノサウルスやらステゴサウルスやら恐竜みてぇな名前は。」
部長「全然違うよ。ア、ル、バ、ト、ロ、ス!ちなみにアルバトロスっていうのは日本語でアホウドリのことだ。」
小池「アホウドリやら頭がパーやら、ゴルフってのはややこしいですね。」
部長「君の頭の中がややこしいんだよ。まぁ、アルバトロスなんて滅多に出るもんじゃないから気にしなくていいよ。」
小池「ところで、あっしは何バトロスになるんです?」
部長「えーと、今25打だから。次に入れれば、名付けるとしたら22ボギーかな。おそらく、このホールの新記録だと思うよ。」
小池「それは名誉だなぁ、ありがとうございます。」
部長「バカっ!皮肉だよ。」


その明くる日、ゴルフをはじめてやった小池は、誰かに教えたくてしょうがない。同じ団地に住んでいる、競馬仲間の中田の家へ。
小池「おい、中やん!いるか?」
中田「何だ、騒がしいな。休日くらいゆっくりさせてくれよ。」
小池「昨日部長にゴルフにつれていってもらったんだ!おめぇにも教えてやるから、外に来い。」
中田「嫌だよ、めんどくせぇ。」
小池「あのなぁ、そんなんだから趣味が競馬しか無いんだよ。」
中田「おめぇに言われたくねぇよ。わかったわかった、行けばいいんだろ。」
小池「そうだ、道具が無いんだった。クラブ、クラブ…そこにあるホウキでいいや。あとは、ボールと…あっ、キッチンにジャガイモがあるな。中やん、それを何個か持ってきてくれ。あっ、そうだ。キャディさんがいるなぁ。どうしようか。あっ、あそこに手頃な婆さんがいる!なぁ婆さん、今からキャディさんになってくれないか?」
トメ「あたしゃトメだよ。」
小池「トメでもコメでも関係ねぇ。今日からキャディさんだ。」
中田「小池、お前なぁ。婆さんに無茶いうなよ。」
小池「よし!じゃあ中やん。まずはこの一番大きいドライバーで打ってみろ。」
中田「一番大きいって、ホウキ一本しかねぇじゃねぇかよ。」
小池「いいんだよ。大きいって思えバカ!そのボールを、あそこの地面にある穴に向かって打てよ。」
中田「あそこだな?うりゃー!あっ、変な方向に行ってしまった。」
小池「ファー!」
中田「うわ!急に大きな声出すなよ。あっ、ばか!お前が大きい声出すから、婆さん気ぃ失ったじゃねぇか!」
小池「やべ!婆さん起きてくれ!(ほっぺを叩く仕草)良かった。目が覚めたみてぇだ。ごめんなトメさん。無理やり付き合わせて。」
トメ「えっ?あたしゃキャディって名前だよ。」
小池「あちゃー、まぁいいか。」
中田「よくねぇだろ!」
小池「名前変わったって誰も気づかないだろ。中やん、次打て!次!」
中田「分かったよ。いくぞぉ、うりゃー!」
小池「お!いい感じだ!入るぞ、入るぞ・・・入ったぁ!」

入るには入りましたが、実はその穴はヘビの巣穴。中にいたヘビが飛んできたジャガイモをパクり!
中田「なぁなぁ、小池!おれのボールどうなった?」
小池「あちゃー。こんなところにヘビが入っていたのか。」
中田「おい、どうなったんだよ?」
小池「ヘビに飲み込まれて、この勝負パーになった。」