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Digit!

日常で起こる様々な現象に、ツッコんだりボケたりするブログ。

新作落語『完全犯罪』

落語の脚本書いたので、ブログにアップしておきます。まだ、書き立てで推敲できてないので、お見苦しいところもあるかも。感想とかあればコメントしてもらえるとありがたいです。

 

 『完全犯罪』

 

 完全犯罪とは、誰にも手口を知られずに終わる犯罪のこと。ちなみに皆さんご存知とは思いますが、あの三億円事件も完全犯罪の一つらしいです。皆さんご存知の時点で、もはや完全犯罪じゃない気もしますが……。
今から話すのは、そんな完全犯罪にまつわる話でございます。

 

 

ある古いアパートに、完全犯罪を夢見る、新人コソ泥が二人。ガタイは良くて裏社会では一目を置かれている「吾郎」と、その弟分の「鉄」。二人は薄明かりの部屋の中で、完全犯罪の計画を企てていた。

吾「おい、鉄。前々から話していた完全犯罪の件だけどよぉ。今日の夜に決行しようと思う。」

鉄「兄貴!ついに計画を思いついたんですね!それで、あっしは何をすれば?」
吾「まずはだな……毛を剃ってもらおうか。」
鉄「毛!?毛ってあの毛ですか?」
吾「他に何がある?」
鉄「どうして、毛を剃らなくちゃいけないんですか!出家する気ですか?それとも、僕を出荷する気ですか!?」
吾「いや、ニワトリじゃないんだから……。あのな。髪の毛一本からでも、DNA鑑定で身元がバレちまう時代だ。そこで全身の毛を剃っておかなくては、完全犯罪ができねぇんだ。」
鉄「なるほどなぁ。えっ、全身ってことは髪の毛も脇毛も下の毛もですか?」
吾「もちろんだ。眉毛もまつげも鼻毛も一本残らずだ。」
鉄「災難だなぁ。」
吾「あとな、犯行時はコレを着てもらう。」
鉄が服を受け取る
鉄「これって全身タイツですか?」
吾「ああ、指紋がついてもいけないから、念には念を押して全身タイツを着ておこう」
鉄「理由は分かりますが、どうして真っ白のタイツなんですか?こういうのって黒が相場だと思うのですが。」
吾「いや、俺も最初は黒のタイツを買おうとしたんだけどな。黒は売り切れだったんだよ。おそらくだが、他の同業者も同じこと考えているんだろうな。すると、店員が白いタイツを持ってやってきて、『お客様は目鼻立ちがすっきりとしているので、白がお似合いですよ』って言うもんだから、『おお、そうかい?』って言って買ってしまったよ」
鉄(聞こえないようにこっそりと)「まんまと騙されてるじゃないか、全身タイツに似合う似合わないなんてないだろ……店員の方が犯罪に向いてるんじゃないか?また、黒と白じゃ真逆だよ。これじゃ逆に目立つような気がするなぁ」
ブツブツ言いながら鉄が白のタイツを着る
吾「おお、似合ってるじゃねぇか!バラエティ番組の若手芸人みたいだな。」
鉄「ぜんぜん褒め言葉になってないですよ。あー恥ずかしいなぁ。真っ赤な顔で、白タイツだから、まるでマッチじゃないか。」
吾「マッチって近藤真彦か?」
鉄「近藤真彦がこんな格好するわけないでしょ!タバコで使う方ですよ!あぁ、顔から火が出そうだ。」
吾「なるほどマッチだけにな。」
鉄「変なこと言わないでくださいよ!」

 

 

その日の深夜2時、二人は前々から目をつけていた豪邸に向かう。昨日から1週間ほど軽井沢の別荘に行くことはリサーチ済みだ。

鉄「着きましたね兄貴。この後はどうすれば?」

吾「俺は玄関で出入り口の方を見張っておくから、その間にお前は家へ侵入して、金目のものを探してこい。」
鉄「…………えっ、それだけ?他に計画とかはないのですか?」
吾「ない!無いものはない!」
鉄「これだったら今までの手口と変わんねぇすよ。変わったことといえば、毛という毛を剃って、全身白タイツを着ていることくらい。これじゃあ完全犯罪じゃなくて完全変態じゃないか。」
吾郎は鉄の肩をポンポンと叩く
吾「お前は俺が認めた、立派なコソ泥だ。胸を張っていけ!」
鉄「コソ泥なので、胸を張るもんじゃねぇと思うのですが……」
吾「さぁ、つべこべ言わずに行ってこい。ほれ!ほれ!」

 

すると鉄が家に侵入してから数分後、警報機がジリリリリとけたたましく鳴る。豪邸に住んでいるだけあってセキュリティは万全。留守中に泥棒が侵入したら、警備システムが作動するようにしていたのだ。窓という窓には鉄格子がかけられ、中からは開かないようにドアにはロックがかかってしまった。

鉄は必死にドアを開けようとするが開かない、ドンドンとドアを叩いて吾郎に知らせる。
鉄「兄貴!大変なことになっちまいました。ドアに鍵がかかって、中からは開きません!」
吾「いやはや、最近のセキュリティ技術というものは凄いな」
鉄「なに感動してるんですか!これじゃあ警備会社が来ちまいますよ!」
吾「分かった、何とかしてみる。」
タックルしたり蹴ったりしてみるが、ドアは頑丈でうんともすんとも言わない。吾郎はうなだれるようにしてドアノブに手をかける。すると、ガチャっと音がしてスーっとドアが開いた。
鉄「あ。」
吾「あ。」
二人は目を合わせて、数秒固まる。
吾「中からは開かないけど、外からは簡単に開くんだな。」
鉄「みたいですね。ここの主人バカですね〜。」
吾「おっと、警報機鳴っちまったから、早く逃げねぇと!今日のところは諦めるぞ」
吾郎は少し走ったが、鉄が付いてこない。振り向くと鉄が止まっている。
吾「何やってんだ、鉄!早くしねぇと捕まっちまうぞ。」
鉄「兄貴〜。さっきビックリしてこけたときに、足をくじいてしまったみたいだ……。俺のことはいいから、兄貴は逃げてくれ。」
吾「なにアクション映画のワンシーンみてぇなこと言ってんだ!ほら、おぶってやるから背中に乗れ。」
鉄は涙をふきながら、吾郎に背負ってもらう。
鉄「兄貴、ありがとう。俺、兄貴に一生ついていくよ。こんな不甲斐ない子分で申し訳ねぇ。重くねぇかい?男一人背負って逃げるのは大変でねぇかい?」
吾「馬鹿言ってんじゃねぇよ。ほら、しっかり掴まってねぇと落ちちまうぞ。足がついちまったらいけねぇや。」